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勝谷誠彦コラム
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2006年10月10日
北朝鮮核実験。
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 やりましたね。北朝鮮。ナントカに刃物、金正日に核兵器。


 先週「年内に核実験なくはない」などと私は遠慮がちに書きましたが、あの時点では政府関係者からはかなりの確率で可能性があると聞いていました。でも、私自身の中に「まさか」という思いがあったことが、ためらいを生んでしまった。「来週あたり」と書いておくとカッコよかったのになあ(苦笑)。




 実は核実験の緊張は8月下旬に一度高まっていました。金正日は、中国に対して300万トンの米と、30億ドルの援助を要求していて、引き換えに石油の掘削権を渡すという交渉をしていた。その条件の中に核実験の中止も含まれていたんですね。


 ところが、8月下旬にそれが暗礁に乗り上げて第一回目の危機が来る。


 中国が猛烈な圧力をかけて、辛うじて回避されたという事実があったようです。


 このあたりから、胡錦濤は焦りはじめた。今回の安倍訪中が驚くほどスムーズに行ったのは、実は背後に「北朝鮮の本気を見た、中国の焦り」があったのです。靖国で因縁をつけている場合じゃなくなったわけだ。


 盧武鉉もそうです。


 余談ながら今回は笑いましたね。安倍さんがソウル到着直後に核実験の第一報。そのあとすぐに会わねばならなかった盧武鉉の心中を察すると、爆笑もとい気の毒で仕方がない。オノレの太陽政策が結果としてこの事態を招いたわけで、どのツラ下げて安倍さんに会うというのか。


 核実験を終えた横穴にでも入りたい心境だったでしょう。


 その盧武鉉も先月あたりから急に、北に対して冷たくなり、同時に訪中の準備も初めていた。


 半島情勢はまさに緊迫していたのです。




 8月の危機が中国の介入で一旦おさまったあと、次は「10月下旬」がポイントだと見られていました。先週私が「年内には」と書いたのはこの情報に基づいています。


 というのも、7月の水害のせいで、今年の北朝鮮の米の収穫は約半分。日本からの送金も制裁の効果で止まり、どう考えてもこの冬を越せそうもない食料事情だからです。


 先軍政治の中核となる軍に、ついに食料がまわらなくなっている。軍人たちは靴にすら困窮しているらしい。


 例年行うコリアン祭は外貨を稼ぐ貴重な機会ですが、これを今年中止したのも、人が平壌に集まる事で、不測の事態が起きるのを危惧したからとも考えられる。


 年内にどうしてもアメリカを交渉のテーブルにつかせて制裁を解除させ、中国韓国日本からの援助を得ないことには、金正日はホントに崩壊の危機に立たされていたのです。


 そこから逆算すると、10月下旬というのが臨界点。それまでに交渉が成立しなければ、まず一発目を爆発させるだろうというのが、アメリカや中国の見方でした。


 それがかなり早まった。理由のひとつはやはり安倍さんの電撃訪中でしょう。つまり、北の暴発を止めるはずのいわば「中国からの招待」が逆に暴発を早めたことになる。


 二重三重の意味で、中国は面子を潰されたわけです。




 では、やってしまったこの核実験はどういう意味を持つか。


 メッセージとしてはアメリカと中国に向けたものですが、アメリカに対しては全く意味がないでしょう。


 これまでいかなる場合でも、アメリカは恫喝に屈したことがないからです。


 いや、一度だけあった。まさに前回の朝鮮半島危機の時です。


 この時も同様な振舞いをした北朝鮮に対して、クリントン政権はほぼ攻撃を決めていた。ところが、「平和おじさん」カーター元大統領が強引に介入してきて、特使として場をとりなしてしまった。この時に核施設を叩いておけばよかったと、今のブッシュ政権の要人たちは悔しがっているそうです。その反省がある以上、アメリカはいかなる交渉にも応じるわけがありません。


 むしろ、北朝鮮は中国に対して強烈なメッセージを出したと言えます。親たる中国に対して不良息子・北朝鮮が「オラア。とっとと金出さんと、家に火ィつけるでえ」という究極の家庭内暴力ですな。わはははは。


 しかし、仏の顔も三度。中国もさすがに堪忍袋の緒が切れたことでしょう。中国とアメリカが今後どういう行動に出るから、あとで書きます。




 それよりも、金正日が手にしたこの危険なオモチャが、本当はどの程度の威力を持ち、我々に脅威なのかをまず正確に把握しておかねばならない。


 実験を受けて各国の専門家たちが首をひねったのは、あまりに爆発力が小さかったことです。広島型原爆(イヤな言葉だなあ)は15キロトンですが、この数分の一の大きさではないかという見方が定着してきました。


 ひとつには「実験は失敗だった」という観測もある。しかしテポドンに続いて、核実験でも失敗すると将軍様の威光は地に落ちるわけで、国家威信をかけた行為にミスるとは思えない。そもそも、核爆発というのはそれほど難しい技術ではありません。


 ならば北朝鮮は敢えて「小さい核爆弾」を作ったとも考えられる。


 広島型原爆は、人口数十万人程度の中規模都市を壊滅させるように設計されています。しかしその数分の一の大きさでも充分に、都市の中枢や基地のひとつくらいは吹っ飛ばすことが出来ます。


 このことはまだ誰も指摘していませんが、私には戦慄すべきことのように思われる。つまり「金正日が核を使うことへのリアリティ」があるのです。


 まずは、ミサイルへの搭載能力が格段に高まる。軍事評論家の江畑謙介さんはNHKで「北朝鮮はミサイルへの搭載能力を確立している」と断言しておられました。


 搭載すべき核兵器が小型であるならば、その能力はぐんと高まる。ノドンか改良スカッドに搭載すれば、日本中のほとんどに「広島型原爆の数分の一の核」を撃ち込むことが出来るのです。


 数分の一。充分じゃないですか。皇居に着弾すれば、霞が関と永田町は壊滅する。銀座も無事ではないだろう。新宿で辛うじて助かる人が出てくるというくらいではないか。


 つまりワールド・トレード・センターへのテロの何百倍もの損害を相手に与えることができるのです。金正日が求めていた「恫喝のための手段」としては充分ではないですか。


 いま、テロと書きました。これがもうひとつの脅威です。


 何もミサイルで飛ばす必要はない。小さな核をこっそりと「持ち込めばいい」です。いわゆるスーツケース核兵器です。残念ながら日本国には北朝鮮の協力者や工作員が大勢おいでになる。今こそ長年にわたって潜伏していたスリーパーを起こす時でしょう。


 都心で破裂させなくともよい。原発に「近づいて」起爆すればいいのです。


 こうした手段をとられた時に生じるもうひとつの困難は、それが北朝鮮の犯行だと国際社会が断定して制裁に踏み切る、あるいは我国が抗戦するまでに、いささかの齟齬が起きる可能性があることだ。


 オウムの時を思い出して下さい。「我々の方が攻撃されている」などという荒唐無稽な論理の前で、私たちはしばらく逡巡を余儀なくされたではないか。


 たとえばスーツケース核爆弾が日本国内で破裂したとして「わが国の犯行であるという証拠がどこにあるのか」と北朝鮮が居直った時にどうするのか。充分にありそうな話ではないでしょうか。




 もちろんそうした小型核爆弾は、北朝鮮以外の国に流出する可能性もある。あるいは、上記のような犯行を、イスラム過激派などの他国人を使って行わせることも充分考えられるのです。こうした時に犯人探しはより困難になる。アメリカが「イラクとアルカイダのつながり」をついに見つけられなかったように。




 おわかりですね。北朝鮮への海上封鎖を一刻も遅らせてはならないのです。もちろん空路と陸路も徹底的な監視をしなくてはいけない。独裁者が核を持ってしまったことはもう取り返しがつかないが、それをあの半島の中に封じ込めておかねばならない。


 特に「小型の核」であるならば、一瞬の躊躇もしてはいけない。




 中国とアメリカの動きは、まずこの危険を防ぐことから始まるでしょう。その中でゆるやかな体制崩壊を狙って行くに違いありません。


 海上封鎖と言うと、日本の軍事オンチのメディアの方々は経済制裁という「入り」のことばかりをおっしゃる。ここまで読んでこられた方はお分かりですね。「出」すなわち核兵器を持ち出させぬためにも、封鎖は緊急を要するのです。


 日本の裏庭で海上封鎖を行うというのに、知らん顔はできない。特別措置法を作って、日本の艦船も公海上で臨検をできるようにするべきです。


 そして「核を見つけてしまった」時にどう対処するのかという訓練を徹底的にしておくことです。




 中国人民解放軍による進駐ですが、これはとりあえずありえない。北京五輪を控えて、軍事オプションはとらないでしょう。しかし、今後体制内の親中派を使って、体制転覆の工作を仕掛ける可能性はある。アメリカのCIAが南米などで使った手です。


 アメリカの軍事攻撃はどうでしょう。


 ピンポイントなどと言いますが、これは地獄を呼ぶ可能性がありますね。


 ソウルに向けて38度線にびっしりと配置された重砲が火を吹く。ただし、盧武鉉のせいで在韓米軍は前線からの撤退を始めていますから、矢面に立つのは韓国軍だ。そういう意味では「アメリカの青年を朝鮮人の為に死なせるのか」という国内の批判からはブッシュは逃れられるわけですが、中間選挙を控えたこの時期に、軍事オプションはとりにくいだろうと考えられます。




 しかし朝鮮半島情勢は待ってくれない。ともかく「この冬を越せない」というデッドラインがある以上、雪崩を打って事態が動く可能性がある。


 いやあ、まさか生きているうちにこんな激動を体験できるとは思いませんでしたね。ともかく、平和ボケから目覚めてください。あなたの身の上にも何が起きるかわからないということを自覚することです。


 目を見開き、耳を欹て、全身の感覚を張りつめていてください。


 あなたとあなたの愛する人を守るためには、それが必要な時が来つつあるのですから。




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