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私の知人に生活保護を受けている男がおります。52歳で独身、の男でございます。この男、身の丈は175で百キロの偉丈夫でございますが、それ由にメタボで糖尿病高血圧を併発せしめております。三年前会社を倒産させ自らも自己破産し、その時体調不良を訴え入院、その後退院して生活保護を受ける日々を送ってございます。現在、住んでいるアパートの家賃は全部区に負担していただき、その他別途8万円の賄い費の給付を受けております。
生活保護を受けるようになって三年、が依然として凹むことのない大きな太鼓腹を揺すりながらやって来たその彼が開口一番「監督、ようやく私の本当の病気が分かりました」と白い紙を差し出しました。何だ、と聞くと「診断書」だ、と云うのです。「68%との診断が下されました」と胸を張ってございます。「ウツ病」に偏差値でもあるまいし%があるのか、と不思議な気がしましたが、糖尿病高血圧を併発し生活保護を受ける身でありながら自堕落な生活を三年も続けて太鼓腹を抱えるこの男が、よりにもよって「ウツ病」とは冗談がすぎると呆れ果てました。
「原因が分かってホッとしました。」と目の前に座ってニコニコしているこの男をいっそ殴ってやろうか、と思いましたがこの男の「ニコニコ」を見ているうちに、この男が実は「壊れかけている」と気づき殴るのを止めにしました。何故この男は「ウツ病」と診断されたのに「ニコニコ」と笑っていられるのでしょうか。それは毎月突然アパートを訪れて「働け」「働けない」の論争を繰り広げていた区の職員のプレッシャーから「解放」されるという安堵感からでした。糖尿病に高血圧それに「ウツ病」とくればもう絶対に区の職員に負けはしない、勝利の予感に酔っていたのです。働けない、ことに安心し病気が一つ増える度に喜ぶ、自らの力で立つことを安易に放棄してしまった者の残念で悲しい姿であります。
この男にこれまで何度か仕事を紹介しましたが、ほとんど三日坊主どころか一日で後は続くことはありませんでした。「生活保護がある」が、この男から人間の尊厳の全てを奪い取ったのです。
地震や災害、病気や社会制度の不安を厄災はつるべ落としのごとく私達を襲ってきます。しかし本当の悲劇は自らの足で立つ「我慢」を葬り去ったとき、やってくるのでございます。そして今日のただ今の充足のみに血道をあげる犬や猫のごとき我鬼に、私達を化身させるのでございます。
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