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村西とおるコラム
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2007年11月29日
甘えない生き方
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 英国航空の預かり荷物のうち、一機あたり平均「10個」が行方不明になっているそうであります。年間160万個が「紛失」している計算であります。もし、これが日本の日航や全日空で起きている「事故」であれば「大騒ぎ」となりましょうが、英国では人々はさほど「騒いだり」はしていないのでございます。「仕方ない」との認識なのでございます。


 どうして預けた荷物が紛失して「仕方ない」と諦めることが出来るのでしょうか。他人に「荷物を預ける」ということは、そうしたリスクを背負うことなのだ、という考えが英国人の「コンセンサス」なのでございます。社会や他人を無条件には信用しない精神であります。個人主義とは目からの安全と幸福は自分の知恵と責任によって守るものだ、という「哲学」であります。だから荷物を預けるときには、無くなっても諦めがつくもののみ、を入れて預ける習慣が徹底しているのでございます。間違っても、巨額の弁護士費用を使って航空会社を訴え、費やした弁護士費用の数十分の一の「賠償金」をせしめて「悦に入る」といった、計算違いを犯すことはないのでございます。


 国や社会を無条件に信じたり、また単純に甘えたりしない精神、こそ健全な民主主義社会を構成する「民草」の精神といえるものであります。甘える国や社会を持たない「民草」もまた、世界に多く存在しています。上海や広州の飛行場で、中国人の幼児を抱いた米国人夫婦の姿を頻繁に見かけます。米国行きの飛行機には10組以上のそうした「家族連れ」が必ず搭乗する風景を見ることが出来ます。


 中国人の親に「遺棄」されてアメリカ人に「養子」として貰われて行く「幼児」達の数は、年間二十万人にのぼるともいわれています。中国の「幼児」を養子として迎え入れる米国人夫婦の晴れがましく嬉々とした表情に心を動かされつつも、親に「遺棄」された「幼児」を「優しく」抱えて「甘え」ることを許さない、中国社会の厳しい現実に暗澹とさせられるのでございます。


 中国の内陸部の地方都市に入りますと、今でも沢山の「物乞い」に囲まれることがあります。口がムンクの描く「叫び」のようにタテに大きく開いたまま、目が額のところに一つ、といった奇形の人とも出会ったことがあります。社会保障制度が「完全」でない中国では「物乞い」も、生きる正当な手段であります。甘えない、生き方を誇りとしたいものであります。




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