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馬術の法華津さん、67才にして見事オリンピック出場を決めております。が、果たしてオメデタイとならなくなったのは団塊の世代のお父さんでございます。ムチ、が入ったのでございます。ようやくして定年退職を迎え、念願のロハスな生活を、と考えていた矢先でした。
「男は60を過ぎてからが勝負よね」の声が聞こえてきました。山の神、の声でございます。「ヤッパリ少ない年金で暮らして生きて行くのはガマンが出来ない、死ぬまで働いて」とその声は主張しているかのようでした。決して大きな声ではありません。つぶやくように、でありましたのに長い年月、山の神の「つぶやき」には鋭く反応する癖がついているお父さんでございます。否、その「つぶやき」を無視すれば山の神がたちどころに細木数子の10倍に変身することを熟知しているお父さんでございました。
お父さんは山の神の「つぶやき」を聞いた翌日から外に出て、再就職活動を始めました。もとより働くことを嫌う気持ちはありません。これまでの人生だって馬車馬のように働きづくめで働いてきたお父さんでございます。しかし、このご時世でございます。これといった仕事がなかなか見つかりません。この間も「引っ越し」の作業員の仕事をしましたが、一日で3ヶ所の「引っ越し」をさせられ、翌日から一週間寝込みました。一日日当八千円の手取りで、マッサージ二回分一万六千円の出費となりました。
ハローワークのテレビに凛々しい法華津さんの姿が映っています。お父さんは馬上の法華津さんより馬の方が気になっていました。その姿に自分の姿がダブって見えていたからです。かくのごとく世の熟年のお父さんには「励ましのムチ」を打つこととなった法華津さんの雄姿なのでございますが、一方その登場は「成功の確率論」を立証するものとなりました。
「成功は10度の失敗の後の11度目に来る」と云われております。世の成功者と言われる人達を統計学的に調べると、その成功は10度の失敗の次の11度目に達成されているという数字が明らかになっております。法華津さんもこの「成功の確率論」の数字に導かれるように44年前の東京オリンピック以後11度目の挑戦の末に、その栄光を獲得したのでございました。
あなたの絶望は統計学的に間違っている、法華津さんのムチの一閃がともすれば失望し負けることを覚悟しがちな私達の頬を、激しく打ったのでございました。
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