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容疑者の白人の弁護士は面会の度に言うのでありました「ファイト、戦いましょう。アメリカ合衆国では闘わない者は負け犬同然となります。」勝利を信じて戦うのです。闘うことでしか、救われることはありません」ヘタをすれば終身刑、悪くすると死刑になりかねない身でございます。容疑者の立場で闘うことに異存があろう筈がありません。目の前で「ファイト」を連発するこの若い白人の弁護士が容疑者には神様に見えてきました「南洋の小島で、こんな情熱的な弁護士にめぐり会えるなんて」容疑者は自分の人生の運がまだ尽きてないことを確信しました。
面談が終わりもう一人の連れの弁護士と通訳が立ち去ろうとしたその時でした。「神様」は一枚の紙を差し出しサインを求めてきました。紙にはアカウント・ペーパー(清算書)と書いてあります。本日の弁護士の面談料として同僚と一緒の二人分500$、通訳料200$、書類作成費200$との数字が読めました。この1時間足らずの面談に日本円で約10万円の費用がかかった計算です。が高い、安いを云っている状況ではありません。命、がかかっています。容疑者は迷わずサインをして弁護士に清算書を渡しました。
弁護士は清算書を受け取ると突然申し訳なさそうな表情をして何か言いました。意味が分からず通訳の方を見ると、通訳氏は弁護士から清算書を受け取って容疑者にある部分を指で示しました。そこには「残金550$」の数字が記されてあります。通訳氏が言いました。「二週間前、あなたの奥様預かった弁護士費用2万$の残金があと550$となりました。これは一回の面談費用にも不足する金額です。したがって残念ですが本日で私達の弁護活動は終了することになりました」
「馬鹿な!」容疑者は思わず叫んでいました。「いまさっき、ファイトだ、と言ったのは誰だ、自分のファイトマネーのことを云ったというのか。突然金が無くなったから今日で弁護を打ち切るなんて、アメリカの弁護士には弁護士として倫理は無いのか」弁護士達はただ押し黙っています。「あといくら必要なんだ」「○万$」通訳氏はあらかじめ想定していたかのように、弁護士を見ることもなくスラリと答えました。「!?」アヌスに打ち上げ花火を突然差しこまれたような気分となりました。
「このサイパンでの闘いだけでそんなに必要なのか」が、この後容疑者は「前門の虎後門のオオカミ」との闘い、といわれる米国本土の裁判の闘いで「地獄の沙汰も金次第」の本当の意味を知ることになるのであります。合掌
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